OBK - 大田ビジネス創造協議会

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航空機を作る中小企業の底力 不況と空洞化の中、夢のプロジェクトに挑む
 中小企業の得意技術で航空機をつくるプロジェクトが進んでいる。二〇〇五年三月には実験機を飛ばし、世界市場で売れる航空機生産・販売する航空機産業をめざす。東京・大田区で中小企業が進めている夢のプロジェクトだ。
 プロジェクトが進めているのは東京・大田区の中小企業が組織するNPO(非営利組織)「大田ビジネス創造協議会」(磯収二理事長)。まず二~四人乗りの小型水上飛行機を産学連携で開発、一機五〇〇万くらいで市場に売り出す方針計画だ。その技術を土台に、将来は七〇~一〇〇人乗りの旅客機を開発、我が国の航空機産業として飛び立たせる構想。
航空機産業不在の戦後
 戦前の日本は、航空機産業では世界のトップ水準だった。零戦がその代表的なもので、世界から高い技術を注目されていた。戦争に負け日本は、米国空軍に日本の空を完全に握られてしまった。日本の航空路の大半が米国に管理されており、日本航空や全日空の旅客機が日本の空を飛ぶ場合、米軍によって航空路が規制されているのだ。
 一九五六年、米軍の規制が一部緩和されてから、官民合同の航空機開発が行われ、六二年にYS11が開発された。七四年までの十二年間に一八二機を生産、国内だけでなく海外にも輸出された。ジェット機時代になり、YS11の後継機の開発・生産が計画されたが立ち消えとなった。その後、超音波の戦闘機の開発が計画された。が、米国の圧力で中止された。
  現在、我が国で生産されいる航空機は、自衛隊機が一機か二機あるだけ。あとは、米国やカナダ、ブラジルなどが生産しているジェット機の胴体など部品の下請けである。
 戦後五八年にもなるのに、日本に航空機産業がないのが不思議である。自動車や造船産業が世界のトップレベルであるのに比べて、航空機産業は育っていない。欧州ではフランスやドイツが中心となって開発したエアバスA300のプロジェクトが成功し、ボーイングを凌駕するまでになった。日本の産業界に航空機をつくる技術がないのではない。米国の規制や日本政府の政策の欠如などから、航空機産業が育ってこなかったのだ。
 日本の旅客機需要は米国に次いで世界二位。航空会社が使用する旅客機のすべてが米国と欧州などから輸入されている。この膨大な市場があるのに、不況で四苦八苦の産業界は手を拱いているだけなのだ。
スタートは水上飛行機
 航空機の部品点数は二〇万点に達し、自動車の二万点の一〇倍もある。関係する企業や業界も多く、航空機産業の裾野は広い。それだけに航空機を開発・生産することは、産業界の技術水準を向上させる。
  大田区のこのプロジェクトは、不況に喘ぐ中小企業が白分たちの技術で航空機を開発・生産することで、実際の商売に結びつけていこうというのが最大の目的。羽田空港に近い大田区には飛行機の部品メーカーが数多く集まっている。プロジェクトには大田区の中小企業のほか、「隣接する品川区や全国各地から技術のある中小企業の参加を求める。すでに航空や自動車、造船などの関連事業で実績のある中小企業約三〇社が名乗りを挙げている。
 設計には東京大学の大学院教授やYS11の開発に携わった技術者、自衛隊の航空機生産を維験してきた技術者らが参加、都立航空工業高等専門学校や航空宇宙研究所なども開発に協力、産学連携で進める。
 最初に開発するのは、小型の水上飛行機。二~四人乗りで、写真のような模型もすでに出来上がっている。一〇月に横浜で開かれた「産学交流フェスタ」には、八分の一の模型を出品、無線で操縦した。
 なぜ水上飛行機なのか-。「飛行場が不要で水面から離着陸できる。離島などへ乗り入れ可能で、災害救助用として利用でき、レジャー用も期待できる」と、大田ビジネス創造評議会の磯理事長は話す。車輪をつければ陸上からも離発着でき、水陸両用も可能で用途は広い。世界の航空機産業のすき間機種といっていいだろう。
 計画では、来年前半には二分の一の小型無人機を製作する。パソコンで遠隔操作する無人機で、来年一〇月に横浜で開かれる「国際航空宇宙展」に出品、実際に無線操縦して披露する。この無人機は翼の長さが五メートルほどで、地上観測用などに利用できる。試作機が成功すれば、無線誘導無人機の生産・販売に乗り出す。
 第二段階では、このノウハウを生かして有人機の開発に移る。翼長は約一〇メートル、乾燥重量が二五〇キログラム以下のウルトラライト級で、製造免許も操縦免許も不要。二人乗りで時速二五〇キロ、航続距離は一〇〇〇キロメートル、価格は高級車なみの五〇〇万円ほどに設定する、という。川や湖、海岸で簡単に離陸ができる。レジャー用や測量囲川、連絡用などさまざまな用途が考えられる。高級自動車なみの価格というのも売り物の一つである。
波及効果は大きい
大田ビジネス創造協議会では、この水上飛行機開発で、以下のような多くの効果を狙う。
 1.自動車産業より広い関連産業がありながら、日本で衰退した航空機産業復浩のきっかけをつくり、全国から中小製造業の参加を呼びかけることによって地域の活性化を図る。
 2.全国の産学広域連携による新ビジネス創造のモデルを京浜工業地帯で実証する。同時に全国の学生や若者層のプロジェクト参加を積極的に進め、モノづくりや研究開発、技術開発に対する次世代の若者層の育成に寄与する。
 3.我が国に豊富な資源である水面の新たな利用や活用を進め、水上飛行機を利用する新事業の創出を図り地域の振興に資する。
 4.飛行訓練学校の全国展開を付帯事業として推進する。それによって飛行機人口の拡大を図る。
 5.水上飛行機の技術の研究開発成果は広く公開する。航空機部品、宇宙ロケット部品やこれらの技術の応用分野の開発に従事する製造業を拡大させ、新規参入者の参加を促進きせる。
 6.ネットにより多数の参加が可能な設計試作システムを開発し、分散工場による製造を可能にする。このシステムを、将来は多くのモノづくりに利用できるサイバー工場として一般にも利用させる。
 開発費は五〇〇〇万円程度を見込んでおり、地方自治体などの肋成金のほか、大手企業などにも出資を要請して調達する方針だ。第一段階の無線操縦機の開発まではNPOの大田ビジネス創遺協議会が進め、有人機の試作に移る第二段階で事葉会社を立ち上げる。商用機の生産と販売はこの事業会社が行う計画だ。
 中小企業が持っている技術を集めて航空機を閉発・生産するこのプロジェクトには経済産業省なども関心をもつており、「失われた一〇年」が統く中、夢のあるプロジエクトとして各界で注日されている。
(ジャーナリスト・志村嘉一郎)